雨と傘
先日、しばらくぶりに雨が降りました。

「雨が降ると、思い出すことがあるんです…」

姫路支社の営業・霜田は、雨雲を見つめながら
ぽつりぽつりと語りだしました。

「そう、あれは2年前…」
姫路支社への配属が決まり、こちらに引っ越してきたころ。
慣れない土地での1人暮らし。 
そんな、ある夜のこと…
帰宅し、明日に備えてぐっすりと睡眠をとっていました。


ガチャガチャガチャ!!!
ガチャガチャガチャ!!!


玄関からの騒音で、霜田は飛び起きました。
誰かが外から玄関のドアノブをまわし、開けようとしているようでした。
時間は、夜中の12時。
こんな時間に誰が、知り合いもいない自分の家の玄関のドアノブを
ガチャガチャいわせているのか…!!

「なんかやだな~。怖いな怖いな~(稲川淳二ふう)」

とかなんとか言いながら、インターホンカメラを確認したところ、
そこに映っていたのは…


狂ったようにドアノブをまわす女。


「こ、怖っっっ!!」

恐怖を感じた霜田はそのまま布団にくるまり
ガチャガチャがおさまるまで、じっと耐えていました。

気が付くと、朝になっていました。
おそるおそる玄関を開けると、そこにはもう人の姿はなく、

濡れたビニル傘だけが、そっと置いてあったそうです。


で、その女の正体は…?


「…上の階の人が酔っぱらってたみたいですわー」


・・・ああ、そうなの…。